さとびこ編集室日記|100年住みたいのは自然にも人にもやさしい地域

自然と人のつながりを地域に根ざして考える奈良発ローカルマガジン「さとびごころ」を編集する「さとびこ編集室」より、日々の活動のことやお知らせ、雑談を綴ります。 雑誌づくりを通して、自然にも人にもやさしいあり方をみなさんとともに考えます。

カテゴリ: 持続可能な森づくり

さとびでは、「美しい森」(vol.42)や、「いつまでも豊かな森」(vol.47)などの特集をして、
森林について理解を深めようとしています。
さとびが直接つながりのある方はもちろんですが、奈良の林業関係のみなさんは、森を大切にされる方が多いと思います。たとえ手入れが行き届かなくなってきていても、心を痛めておられますし、課題の解決に努力されている方もあります。

でも、日本全体で見ると、心配になってきます。

NPO法人自伐型林業推進協会の代表理事 中嶋健造さんが
SNSで投稿されていた写真をシェアさせていただきます。
中嶋建造さん投稿1


中嶋建造さん投稿2


 FBアカウントをお持ちの方は、投稿をこちらでご覧ください。


 
中嶋さんは、奈良でコロナ禍以前まで行われていた「明日の奈良の森を考える学習会」(本誌も協力)のゲストとしてきていただきました。あすなら森の連載をする以前でしたので、記事にはなっていませんが、たくさんの参加者がありました。今ではさとびのライターもしていただいている北直紀さんとの出会いもこの時。

こうして、叫ぶように投稿されている現実を読者のみなさんはどうお感じになるでしょうか。

わたしは、もう山が泣いているようにしか見えません。
アニマルウェルフェアを提唱されている方がいらっしゃいますが
これはさながら山への虐待のように見えるんです。
胸が痛みます。

わたしも含めて、読者のほとんどの方は林業に直接関係があるわけではないと思います。
けれども森林愛のある人が多いと思います。

無力と思わず、持続可能な森づくりとは、どのような行動を指しているのかを考えたり、知っていきませんか。それは世論となります。無関心だったら、これからも一部の人たちが虐待をしてしまうのではないでしょうか。



樹木は育つのに長い長い年月が必要です。一度壊してしまうと、簡単には戻りません。
その間に何か起こるか、もう事実が示しているのではないでしょうか。
皆伐は、メガソーラーや風力発電など、「いいこと」と思われていることのためにも行われていることも認めなくては。
自然はいつでも、自ら然るべき方向にだけ動きます。人間の都合のために動くわけではありません。


奈良には、フォレスターアカデミーもありますし、大和森林管理協会も、奈良県森林総合監理士会もあります。岡橋清隆さんは、自伐型林業の講師として尽力されています。佐藤浩行さんは、近自然森づくりの普及に尽力されています。また、先の号で紹介した西尾和隆さんたちは、環境を再生(大地の再生)させる方向で活動されています。

森林の豊かな場所は過疎地です。過疎の課題に悩んでいる地域です。
悩みの解決には、森林が売り渡されてしまう理由に向き合うことだと思うのです。人が観光や交流人口としていい意味で訪れること、移住を歓迎している地域であれば移住先として検討すること、その時を活性化する取り組みに交わること、その土地の産業を応援し、購入すること、その地で林業や森林業に取り組む人にエールを贈ることなどがあると思います。他にもあれば、教えてください。いっしょに考えましょう。
誰にでもできることは、「わたしたちは関心を持っています。わたしたちは森林を大切なものだと思っています」その思いを自分なりの「行動」で表現することではないでしょうか。



さとびの読者のみなさまから、持続可能な森や自然環境への思いが膨らみ、つながりますよう祈る思いです。

お読みくださり、ありがとうございました。 


 
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在庫切れになった後も、時々ご要望が寄せられている冊子、
「近自然の森と奈良」を増刷しました。 

近自然の森と奈良商品写真
近自然森づくりの普及活動をされている佐藤浩行さんが
「明日の奈良の森を考える学習会」(奈良県森林総合監理士会主催)での講演をまとめたもの。
当編集部も陰ながらご協力していました

学習会のレポはのちに本誌でも、同会 会長の杉本和也さんに連載していただきましたが
この頃はまだなく、近自然の森について伝えたいと考えた編集部が
講演内容を冊子にしました。 

佐藤さんが近自然森づくりに興味を持ったわけから始まり
経済と環境が両立できるという視点で価値のある森とは?を説いています。

また、奈良で実践していくには?という手順も説明してあります。
奈良でなくても参考になることがたくさんあるでしょう。

森づくりに関心ある人や、森と縁遠いからこそもっと知りたいという人に
読んでいただけたらと思います。

冊子の作成には、奈良県森林総合監理士会様、谷林業様のご協力を得ています。
ありがとうございます。


<森のはなし>近自然の森と奈良(佐藤浩行 著)
A5サイズ
20P
フルカラー
発行:オフィスエルインク(さとびごころ発行元)

¥400

発送開始 7月中旬

お求めは編集部にご連絡ください。
HPのお問合せフォーム
FBページsatobico へのメッセージ
オンラインショップ
などでも受け付けています。

数量限定少部数発行です。よろしくお願いします。



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100年住み続けたい奈良のための地域づくりマガジン
さとびごころ(編集:さとびこ編集室 発行:オフィスエルインク)
https://satobigokoro.org/

ご購入、お問い合わせはHPのフォームからどうぞ。

オンラインショップはこちら。

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次号、vol.49(2022.spring)では、バックナンバーで2回にわたってお伝えしてきた天川村での広葉樹の森づくりプロジェクトのその後をお伝えします。


天川村の地域林政アドバイザーでもあり、奈良県森林総合監理士会会長でもあり、そしてさとびに理解あるライターさんとして森企画関連でこれまでも度々寄稿していただいている、杉本和也さんの執筆です。



天川村の現地でこのプロジェクトが始まったのが2019年。120年間の分収契約(造林者が土地所有者に借りた土地で木を育て契約期間内で伐採し販売する契約)が満期を迎え2代目の60年あまりここで育ったスギ・ヒノキが伐採されました。その立木販売価格が余りにも安かったことに衝撃を受け、土地所有者である洞川財産区は、この広い伐採跡地に地域の自然にふさわしい本来の恵み多き森を育てたいという思いが強くなりました。(vol.49より)


今では、壊れない道づくりが進み、
2

自然配植の勉強会も開催され、
4

植林が進みました。
1


植樹祭には、編集室も駆けつけたんですよ。このころと比べたら、また景色が変わっているんだろうなあ。。。

 



これまでのいきさつが詳しく語られた過去記事は、こちらからどうぞ。

 

2回連続企画となったこの物語の続きが春号です!


杉本さんは、大阪生まれ。小学生の頃は、光化学スモッグの公害が騒がれた時代でした。だからこそ、美しい自然が大好きで、いったんは林野庁へ。その後奈良県庁農林部(当時)へ。現在は、天川村で地域林政アドバイザーとして持続可能な森づくりを地域思いの目線にたって取り組んでいらっしゃいます。

編集部が杉本さんと交流する中で、終始一貫して感じることは、杉本さんが本心から持続可能な森とは?を探求し続け、公務員という制限の多い仕事を重ねる中で矛盾を感じることがあっても諦めず、森林総合監理士の資格もいちはやく取得(資格がありさえすればいいという意味ではなく、日本にもフォレスターが必要というお気持ちの表れだと思います)して、退職後に地域林政アドバイザーとして天川村に事務所を構えられました。持続可能な森づくりに取り組める機会を求め続けてこられたということです。

それが顕在化したのがこのプロジェクトでもあるのかなあと思うので、この森のことを思うと杉本さんの裏方としての努力が伝わってくるんです。

みなさん、森づくりには、ただ木材を売ればいいという考えだけで伐採し、土砂崩れなどの環境への影響のことにはあまり無関心な例もあれば、このように皆伐が約束されていた森のアフタフォローを努力して資金調達し、行政とも調整し、地元の仕事創出にも繋げながら取り組んでいる人もいるのです。

地域や森は、射幸心や名誉欲とは無縁な、人や自然を愛する人の取り組みに支えられていることを知っていただければと。そう思いながら企画しました。春号で、ぜひ実際の記事をお読みください。



  
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さとび読者の安田様(もくの会事務局)から
お便りをいただきました。


ご無沙汰しております。
いつも「さとびごころ」を送っていただきありがとうございます。

さて、本日、さとびごころに紹介されていた記事を読んで
もく(木)の会のメンバーと奈良県フォレスターアカデミーの
見学に行って来ました。
午前中は藤平校長よりフォレスターアカデミーを設立した経緯や
入学してきた人たちの状況、卒業後の目標などをお聞きし
午後は恒続林を実現するための選木実習を見学させてもらいました。
「さとびごころ」を読んだ時から、ずっと実際にこの目で確かめたいと
思っていたことが、今日実現しました。
このようなキッカケを作っていただきありがとうございました。
今後ともよろしくお願いします。

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NPO法人もく(木)の会事務局 安田里美
〒559-0034
大阪市住之江区南港北2-1-10 ATC ITM棟5階 J-5-1
 TEL 06-6615-5117  FAX 06-6671-2135
 e-mail info@mokunokai.jp
 HP https://www.mokunokai.jp
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恒続林を実現するための選木実習を見学
恒続林を実現するための選木実習を見学(キャプション:安田さん)

説明をする佐藤さん

説明をする佐藤さん(キャプション:安田さん)




さとびがご縁をおつなぎできて、嬉しく思います。

あれ?  佐藤さんて、編集部がいつもお世話になっている佐藤さんでしょうか。
(恒続林の説明ですから…)
お疲れ様でした。佐藤さんにはvol.47で森の豊かさについてたっぷりと語っていただいています。
経済と環境が両立する思考にもとづく自然に近い森づくりが、豊かな森につながり、最終的にそこは気持ちのよい場所、本能が生き延びられると感じられる場所なんだと語ってくださいました。 

そしてまた 

藤平さん、お疲れ様でした。

藤平さんには、vol.47特集「いつまでも豊かな森」で執筆いただきました。
安田さんがきっかけになったとおっしゃってくださった記事です。

vol.47藤平さん記事
 
編集部が見学に行くときも、ぜひ宜しくお願いします!

vol.47は SATOBICO SHOPで再入荷していますので、ご興味のある方はどうぞ。



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とうとう11月も今日で終わりです。
昨日まで、福井県に行っていました。
その直前、天川村でキハダの森づくりに関するイベントがあり、さとびで取り上げたテーマでもありますので、行ってきました。

FBページでもご報告しましたが、こちらでも書いておきますね。





さとびvol.37と38にわたってご紹介した企画記事
読者のみなさま、覚えてくださっていますか。
その3年間の事業が来月12月をもって一区切りするとのことで、植樹イベントが行われました。
編集部もかけつけ、キハダの苗木を植えさせてもらいました。



筆者の杉本さんは、奈良県森林総合監理士会の代表でもあり、天川村の地域林政アドバーザーとして、村の森づくりに深く関わっていらっしゃいます。就任当初の大きなプロジェクトがこの記事の案件です。

みなさんは、山がごっそり皆伐されている姿を見ると、なんだか心配になったりしませんか。
わたしはそうでした。急に樹木がなくなると、土が流れやすくなるのではないか、直射日光にさらされて風化するのではないか、この場所はこれからどうなるのだろうか。などなど、素人なりに気になるわけです。

そんなとき、「分収林」というものがあることを知りました。天川村洞川にあるこの場所も、それです。

土地所有者は洞川財産区。立木を育てる造林者とは別。契約した年数が過ぎると立木を(切って)販売して、収益を分配するという契約に基づいた森林です。ここでは平成29年に満期を迎えました。けれども、契約されたのは60年以上も昔の話。この間に時代がまったく変わってしまい、林業は伐採搬出経費すら捻出できない状況に。再び、従来のような杉、ヒノキを植林したとしても、100年度にその需要はどうなっているのだろうか。それまでの間、育林する担い手はいるのだろうか。皆伐した後、この森はどうなっていけばいいのだろうか。
そこで、視点を変え、広葉樹を育てて持続可能な森づくりをすることになりました。

ここは陀羅尼助の里、洞川。その原料であるキハダは、和漢胃腸薬『陀羅尼助』の植物原料で、ミカン科落葉広葉樹です。そのキハダを育てようというアイデアが生まれました。
そんなとき、杉本さんは農業法人ポニーの里ファームさんと出会い、キハダの重要性や可能性に確信を得て村に働きかけ、村もその一員である一般社団法人フォレストパワー協議会の事業として「農林水産みらい基金」のコンペに応募したのです。

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締め切りギリギリの滑り込み応募でした。その結果、見事に採択。杉本さんのファインプレーなのですけど、そこまで知る人は関係者のみですので、さとびとしてはここで声をあげておこうと思います。


2018年に農林水産業みらい基金の助成を受けスタートした事業の内容


皆伐跡地には、獣害防除の柵が作られ、さとびでも登場していただいている岡橋清隆(参照vol.42「美しい森」でロングインタビュー)さんの指導のもと、作業道が張り巡らされていきました。スノーパーク洞川、いわゆる洞川スキー場に隣接している10ヘクタールという広大な面積です。


道づくりと並行して、苗づくりも始まりました。キハダの苗づくりは、天川村やポニーの里ファーム等で行われました。杉本さんも村内で苗づくりをされていました。うまく育たず苦労されたり、葉っぱが出揃うと喜んだり。編集部も時々天川村へ出かけて杉本さんを訪ねたものでした。

 
satobi38-18



ひさしぶりに訪ねたキハダの森。地元の方や協力隊の方たちのおかげで、すでに約2万本の苗木が植えられていました。
わたしたちは、イベントとして、ほんの少し植樹させていただいたというわけです。
植樹

皆伐直後から折にふれてはここを訪ね、気にかけてきたので、いよいよ森へと育ち始める時を迎えて感動です。

 

現地では、記事を執筆くださった杉本さんや、
杉本さん
事業主体者である一般社団法人天川村フォレストパワー協議会の亥瀬さん、
いのせさん
苗木育成でプロジェクトに関わられたポニーの里ファーム保科さんにも会えました(黄色いアウターを着ている人!)。
モアツリー

また、大和高田市にある大峰堂薬品工業株式会社の研究開発部・安原菜々子さん、生産調達室・北林誠章さんも参加されていました。(キハダの出先になるといいですね)

保科さんによると、
「みなさんが植えてくださったキハダは、20年後に天川村の陀羅尼助丸として利用され、誰かのお腹を守る役割を担います」とのこと。
20年後、わたしの足腰はどうなっているでしょうか。せめて15年後の姿までは見に来たいと思います。 
 

場所はスノーパーク洞川の隣接地。今は、切り株と道の他には、びっくりするほど何もないように見えますが、2万本の広葉樹の苗木が待機中なのです。

作業道景色2

作業道景色



 
この景色が見える場所まで歩いて登ってみました。わたしは、岡橋さんの作られる作業道がスニーカーのままでも息切れすることもなくどこまでも上に向かって歩けることを知っています。
作業道2

作業道1


道は山の斜面を削りながら作り進められます。削り過ぎず、山を守りながら作られるのが岡橋さんのやり方です。できたてのときだけ見える土の断面。
キハダの森-土2
腐葉土になっている部分がどのあたりまでか、見えますね。

キハダの森-土
植物の根がここまで伸びています。根ではなくて、菌かもしれませんね。
樹木は、根や菌を通じてコミュニケーションしているそうです。
今はなんて語りあっているのでしょう。

「なんだか、人の手がはいちゃったなあ。新しい仲間が引っ越してくるらしいよ。まあ、俺たちもぼちぼち、もとの状態を目指して育っていこうか」

なんて?


ゆるやかな勾配のヘアピンカーブの道。いつかここに木陰ができる日を想像しました。
この道は、まだ発展途上なのです。ここに草木が育ち自然の力とともに、道が完成します。道作りと森づくりはリンクしています。岡橋さんの道づくりは、壊れない道とも呼ばれ、水の流れや植物の性質を考え、作業する人のことや、搬出にかかる経費のことも考えらているものです。

これからも、天川村に来ることがあったら、ここを訪ねて、苗木たちに会いたいと思います。わたしが植えた苗はちゃんと育ってくれるでしょうか。関わりができると、訪ねてくる楽しみも増えますね。

編集長


部員さんもご機嫌です。
部員さん


キハダの森は、散歩に、スポーツに、多くの活用が見込まれます。
杉本さんも、「たくさんの人にきて欲しい!」と望んでおられました。とはいえ、無断で侵入できる場所ではありません。今後のお知らせをチェックしましょう。編集部がキャッチした情報は、またこのブログでもお伝えいたします。

杉本さんには、来年春号で企画記事の締めくくりとなる執筆をお願いしています。ぜひ、読んでみてくださいね。 
  


また、この森のさらに隣に広がるゾーンはmore-treeさんと村が締結して、さらに森づくりが始まるようです。
https://www.more-trees.org/news/20210608/


天川の森の恵みをとどけるグッズはこちらからお求めになれます。
https://ozunu.stores.jp


福井県に行ったお話は、このあとの記事で書きますー。


 




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