さとびこ編集室日記|100年住みたいのは自然にも人にもやさしい地域

自然と人のつながりを地域に根ざして考える奈良発ローカルマガジン「さとびごころ」を編集する「さとびこ編集室」より、日々の活動のことやお知らせ、雑談を綴ります。 雑誌づくりを通して、自然にも人にもやさしいあり方をみなさんとともに考えます。

2020年12月

さとびごころ編集部のあなんです。
とうとう2020年が終わろうとしています。
この一年、コロナ禍のことがあった中で、
取材に対応してくださった方、ご協力いただいた方、
そして小さなマガジンを求めてくださった方、本当にありがとうございました。

次号ができるまで、あまりお正月気分にはなれませんけど(汗)、
44号をお届けすべく頑張ります。

100年住み続けたい奈良のための地域づくりマガジン。
編集部が100年住みたいのは、自然にも人にもやさしい地域です。
どこか遠くではなく、今ここで暮らす自分たちの場所を幸せなものに。
そんなふうに望む人の心に届く記事作りをいつも目指しています。
これからも宜しくお願いいたします。

みなさま、どうぞ良いお年をお迎えください。

さとびごころ編集&発行人 阿南セイコ



PS 44号の表紙はこんな感じです!
44号表紙絵


 
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今年が暮れようとしています。
次号の準備も、まもなく最終段階です。
特集は、地酒で楽しむ奈良2。
奈良の地酒ブームの牽引者となった酒店。
与えられた風土に開眼した蔵元杜氏。
そして、廃業寸前から次世代に継承されていく蔵の物語等を
お伝えします。

(写真は取材中の一コマ)
vol.44特集地酒で楽しむならより


稲作があって、日本酒が生まれました。
わたしたちの祈りと文化が染み込んだお酒。
新しい年を迎えたら、おいしい日本酒を楽しむ方も
多いことでしょう。
さとびごころが届けたいものはいつも、そんなお酒が生まれるまでの
山から湧く水や田んぼを含む 自然と人の営みへの思いです。
お口に合いますように。

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vol.43の企画記事でご紹介した、奈良県での田んぼダムの取り組み。
土木技術職の経験のある方や環境保全に興味のある方などからは、反響をいただきました。

vol.43 田んぼダム記事

(画像は記事の一部です)


治水といえば、山の谷間に流れる川ををコンクリートで固めて
堰き止めるダムを作る方法がほとんどです。
けれど、コストや環境への負荷を考えると、これからは田んぼダムのように、
自然にも人間にもメリットがある、または人間への負荷が少ない、という方法が
もっと広まってほしいと編集部は願います。


同じような取り組みが、7月の九州豪雨で反乱した球磨川の治水対策にも取り入れられるそうです。

12月30日の読売新聞オンラインで配信され、Yahoo!ニュースになったのが下記の記事。
リンク切れになる前に、転載させていただきます。


独自】熊本・球磨川治水対策、県「田んぼダム」整備方針…数百円の調整板で川の増水防ぐ
7月の九州豪雨で氾濫した熊本県・球磨川の治水対策について、熊本県は来年の梅雨時期に向け、球磨川流域で200ヘクタール規模の「田んぼダム」を整備する方針を固めた。田んぼダムは大雨時に一時的に水をためる治水対策で、実現すれば、九州では最大規模。流域全体での取り組みとするため、市町村ごとに20~30ヘクタール程度の水田で導入を目指す。


 田んぼダムは、大雨時に水田の排水口に小さな穴の開いた調整板を取り付ける。川への排水を抑制して増水を防ぐ機能がある。板の費用は数百円でも済む。新潟県で始まった治水対策で、農林水産省によると、東日本を中心に取り組みが広がっている。国土交通省が18日に公表した球磨川の流域治水案でも、田んぼダムがメニューの一つに挙げられていた。

田んぼダム読売新聞記事関連画像


 熊本県が、球磨川上中流域の10市町村に実施を打診し、おおむね了承を得たという。調整板購入や排水口整備の費用は県が補助する方針。200ヘクタールで15センチの雨水をためた場合、単純計算で30万トンの貯留効果が期待できる。また、一部の水田では、遠隔操作で一斉に排水量を調整する「スマート田んぼダム」を採用することも検討する。

 県は2年間のモデル事業として取り組み、さらに面積を広げたい考えだ。県幹部は「すぐに取り組める上、『みんなで地域を守る』という防災意識の向上にもつながる」と期待している。

 田んぼダムに詳しい新潟大農学部の吉川夏樹准教授(農業水利学)は「面積が広いほど効果が見込めるため、流域全体で取り組むことに意義がある。取り組みが持続するための仕組みづくりも重要」と話している。 
本誌で記事を執筆してくださった「農家のこせがれ」さんも、嬉しそうでした。
vol.43は、来年にはウェブにアップする予定ですので、手元に本誌をお持ちでない方は後ほど、そちらでもお読みいただけます。
(共感していただけましたらぜひ定期購読で応援してください)



農家のこせがれさんによると、田んぼダムは上記の記事にあるとおり
新潟県で始まった取り組みだそうです。

新潟県に行かれたことはありますか。奈良県民から見ると、田んぼがとにかく平べったくて広い!!
この信濃川流域は、昔から水害とともにあると言っていいほどの地域でした。
現地の人から、「昔の農家は腰まで浸かって田植えをしていた」と聞いたことがあります。
その悩みから生まれたアイデアのようです。

奈良県は新潟県のように広大な田んぼも、信濃川のような大きな川もないのですが、年々集中豪雨化していく気象変動のことを考えて、田んぼダムの取り組みが行われています。
しかし農家や都市住民の理解が必要なため、一部にとどまっているようです。

さとびごころを通して、田んぼダムへの理解が進むといいなあと編集部は思っています。 
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編集部のあなんです。
あれは何年前のことだったでしょうか、さとびごころ 編集メンバーとして、「奈良の文化と生物多様性」という連載を提案して担当し、北川忠夫先生に絶滅危惧種のニッポンバラタナゴをめぐる記事を書いていただいたことがあります。25号から28号の4回にわたって連載していただきました。

このページをウェブで読んだ、という淡水魚大好きの方にも後々出会います。
また、この連載を読んだとことがきっかけとなって、ある漫画家の方が、作品のモチーフにしたくて先生にコンタクトを取られたり。知らないところで、反響を生んでいました。


先生と出会ったきっかけは、プロジェクト粟の三浦雅之さんつながりのご縁からでした。

そして、その三浦さんとわたくしがホストとなって、毎回ゲストをお招きして誌上トーク会をするのが「風は奈良から」という連載企画です。

vol.44のゲストが、まさに北川先生。おひさしぶりにゆっくりお話を伺ってみると、先生の生物多様性への熱意は少しも衰えることなく、活動も広く認められつつあるのでした。

 さとびごころvol.44-北川忠夫近畿大学准教授

テーマは「生物多様性をしくみ化する」。
トークの趣旨を記事中の三浦さんからの言葉から引用しますね。

…特に今回は、興福寺さんという奈良の大変シンボリックなところでの放生会にまで携わられていることの真意や、未来への広がりも含めてお聞かせいただきたいと思います。 

絶滅危惧種は保護の対象になりながらも、予算なくしては持続しない課題があります。そこをしくみ化することで持続させようという先生の取り組みは、私から見ると「発明」に値すると思えました。詳しくはvol.44をお読みくださいね。

取材場所は、奈良市内の酒房亜弥さんという魚メニューが豊富なお店。ここでは、オーダー係は北川先生であり、珍しい魚も解説つきで、さすがは北川先生!でした。
いつも時間を忘れて話しこむのがこの企画の特徴で、あとから編集・構成するのが大変です。何が大変かといいますと、「載せたい、、載せられない」の葛藤が、です。

そのひとつ、放生会のお話を、当ブログを訪問してくださったあなたのためだけに!
ここに載せておきますね(笑)。さて、放生会とは何でしょうか。


北川:放生会は、仏教の考え方で、食料になる生き物を捉えて売り買いしたものの一部を、自然に帰すことで功徳を積む行為を儀式化したものです。昔は、保存技術がないので、その地域で狩猟した小魚や鳥などが出回っていました。生きたまま売れば冷蔵する必要もなく、買った人が自分でさばくほうが理にかなっていたんです。地域で捕獲したものをを地域に放つことで儀式として成り立っていたんです。

阿南:来年のために、たらの芽を全部とらずに残すのに通じますよね。
 
三浦:そうなんです。農業にもよく似た行為があるんです。昔の農家さんて、豆を3粒まきましょうって考えでした。一粒は、育てます。一粒は人間が食べます。もう一つは鳥にあげましょうと。うちらの村でも、柿の木がたくさんあるんですけど、上のほうとかあえて取らないんです。取ろうと思えば取れるんですけど、根こそぎ取らないんです。
 
阿南:そう、その「根こそぎ取らない」は本誌がとても伝えたい考え方!それができれば、結局は人間にとっても、いつまでも恵みを得続けることが可能になりますから。
 
三浦:興福寺さんという奈良の大変にシンボリックな所で、放生会が行われているということで、実は、英語でいうとインタービーイング(相互依存)にあたり、全部がつながっていてまわりまわって互いにメリットがある、そんなつながりを大事にしようという儀式ではないかなと思っているんです。


その放生会、実際には金魚や鯉を放つのが普通になっているそうです。そこで、北川先生は、、、、。

川や水棲生物、生物多様性、地域づくりなどに興味のある方には
きっときっと興味をそそられる記事になっているはずですので、ぜひお読みくださいね。



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だんだん暮れも押し詰まってきますね。
12月の中旬からは寒さも増してきて、朝や夜の外出はちょっと辛いですね。
一年の終わりには、今年の感謝や来年以降のことを考えます。

感謝ということの大切さを、深く感じるようになったのは
ずいぶん年を重ねてからのことでした。
至らぬ人間でございます。
みなさんは、いかがですか。
今や、わたしは寝ても覚めても感謝、感謝です(^^:)
みなさま、今年も一年本当にありがとうございました。




来年からのさとびごころ、、、、とはいえ、すでに冬号は
校了にむかって進行中ですので、春以降ということになりますが、
新年を控えて、あたらしいプランも温めています。

自然にも人にもやさしく、、、、3年間ずっと言い続けてきた言葉。
社会を見渡すとSDGSなどが広まり
一般の雑誌を見ても、環境への配慮をテーマにした記事などが
増えてきているように見受けます。

先に書いたこと なども心に留めながら 
小さな小さな地域マガジンである本誌は、
どんな道を進んでいけばいいのか、ブレないで行きたいなと。


地域で暮らすということは、昨日も今日も
一見変わりなく過ぎていきます。
(もちろんコロナのことがあり、今年は大変な思いをされた方も
あったと思います。。。)

その変わりない日々が、俯瞰してみたときに、一歩、一歩、
どちらへ進んでいっているのかを感じていたい。
その方向が、自然にも人にもやさしいものであってほしい。

「やさしさ」こそ陳腐化しやすい言葉かもしれませんが
あえて掲げています。
例えば災害にあったり、失業したり、怪我や病気をしたり
あるいは、ひどく落ち込んだりと
「しんどさ」に苛まれることがあっても
顔の見える関係の中で何か助け合えるような
地域であれば、どんなに暮らしやすいかと思うのです。 

(その意味で、コロナが原因で人が分断されるのは心が痛みます) 

物質的に豊かになったのだから、これからは心の豊かさが大切だと
さとびを創刊された大浦さんはおっしゃっていました。
「人のことなどかまっていられない!」といった
追い詰められた状況 ではなかなか、そうは行きません。
根底のところに大きな安心感があってこそ、
やさしさも発露できるのではないかしら。

やさしさの源は、その人の「考え方」次第ということはありますが、
現実的に考えて、「食べていける状態」であることが
とても重要な前提条件になるのではないでしょうか。

自然から与えられる十分な食べ物があったとき
容易に誰かにあげることができます。
逆にもし乏しければ、「それは自分のものだ!奪うな!」となるでしょう。

そういう根源的な安心感というのは
やはり「農」を大切に考えることから繋がってくるものではないかと
思いまして、さとびごころに載せたいものとして
来年はもう少し「農」関係の記事を
増やしていきたいなあと思っています。




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