さとびこ編集室日記|100年住みたいのは自然にも人にもやさしい地域

自然と人のつながりを地域に根ざして考える奈良発ローカルマガジン「さとびごころ」を編集する「さとびこ編集室」より、日々の活動のことやお知らせ、雑談を綴ります。 雑誌づくりを通して、自然にも人にもやさしいあり方をみなさんとともに考えます。

2018年11月

冬号の準備が進行中です。テーマは縄文。

皆さんは橿原考古学研究所附属博物館へは、よく行かれますか?
そうでもないという方、行ったことがないという方も多いのではないでしょうか。

かくいうわたくし(あなん)も、若い頃に取材で何度か行ったことがあるものの
個人的にしばしば訪れるようになったのは近年のこと。
旅へ出ると、必ずといっていいほど、その土地の歴史民俗博物館へ行き、
「へー、なるほど」「へー、なるほど」を内心で連発して喜んでいるわりには、
電車で行く(奈良市在住のため)地元の宝については「また行こう、こんど行こう」と思ったままになりがちでした。かつてのわたくしのような、あなたに。

大変面白い所ですから、おすすめです。まず、すいています。
人ごみはお好きですか?並ぶのはお好きですか?そうではないという方、きっと嬉しいはず。

次に、ボランティアガイドの方がいつでもいらっしゃいます。そして丁寧に説明してくださるのですが、日によって当たる方が違いますので、ガイドさんによってお好きな年代があるようで、何度行っても新しい解説が聞けるのが面白いです。
音声ガイドと違って、その場で話しかけたりできますから、質問したことから話が広がって
ついつい話が盛り上がりそうになってしまうことも。(他の見学者さんがいらっしゃったら迷惑なので控えていますよ!)

「どちらからおいでですか?」と聞かれることがあります。「奈良市からです」というと、「ほー」と、嬉しそう。県外からの来館者のほうが多いそうです。地元の人にこそ興味を持ってほしいと、ガイドの皆様も思っていらっしゃるのでしょうか。

橿原公苑陸上競技場。実は、この下にも縄文遺跡が眠っています。研究所が生まれるきっかけになった遺跡。スポーツ観戦の際には、少し遺跡のことなども思い出していただき、時間を工夫して博物館を見学なさってください。
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と、ここまでおすすめしておきながら、博物館は工事のため12月末にて長期休館になります。
さとびごころ冬号が発刊された頃には、すでに閉まっているのです。

さとびごころの特集でお伝えできることは、ごくごく限られておりまして、
興味をもっていただくきっかけづくりになれば、、、というものですが、
こちらの博物館は知れば知る程見応えが増す、豊富な資料が揃っています。

一般的に、博物館における縄文の出土品は、最初のほうにちょっとだけ土器や石器が置いてある場合が多いのですが、こちらではたっぷり。
(つまり弥生以後はもっとたっぷり)

ぜひ、年内にお運びください。

橿原考古学研究所附属博物館
http://www.kashikoken.jp/museum/top.html

【追伸】

橿原考古学研究所(橿考研)は、今年(平成30年)、創立80周年!そのきっかけは、1938年(昭和13年) - 「紀元二千六百年記念行事」の橿原神宮外苑整備事業として橿原遺跡の調査が行われ、京都大学の末永雅雄9月13日より現地で調査指揮に当たったことでした。この日が橿原考古学研究所の創立記念日とされています。橿原遺跡から見つかった縄文時代の耳飾りが、研究所のロゴマークになっていたのだということを、編集委員の神野さんから教わりました。そうだったのですね!


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編集部の阿南です。高知旅のつづきは、馬路村。あのポン酢で有名な馬路村です。

せっかく高知へ来たのですから、一目見ておこうと出かけました。高知市内から西へ、安芸市から山のほうへぐんぐん進むと馬路村へ着きます。木々に囲まれた景観の美しい加工場「ゆずの森」は、内部を見学できるようになっています。温泉も宿もあります。
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人口800人。かつては林業で栄えた村が、このままでは衰退する、、、なんとかしなければ。30年前から農協が中心となって取り組んできたのは、どこの農家でも必ず庭先に植えていた、村民が大好きなゆずの特産化でした。
「ゆずの森」で、説明してくださった職員の本澤侑季さんは、「もともとをたどれば、農協が統合されるときに、それを拒み独自の道を進むと決めたことが発端です」とのことです。何をやってもうまくいかなかった頃の話から、ゆずドリンク「ごっくん馬路村」(馬路村公式飲料、ですって)が開発されて、ポン酢醤油日本一と呼ばれるまで、どんなふうに今日までに至ったのか、いろいろ話してくださいました。

HPもおすすめ。
https://www.yuzu.or.jp/user_data/dekigoto.php

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独自の道を選んだ地方には、面白い取り組みが多いように思います。

村民のすべてがゆずを出荷する農家、というわけではないそうですが、ちょうど出荷の時期であったこともあり、村内で何度もゆずを積んだ軽トラックを見かけました。これを、「軽トラッシュ」というのだそうですよ。

村内のいたるところにゆずの木。村民があたりまえに愛してきた果樹。
馬路村のゆず

加工場は、日曜日のために稼働していませんでしたが、見学はできました。
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馬路村のブランディングは、手書きの墨文字のあたたかさと、クスッと笑ってしまうユーモアが魅力。裏方でデザインを支える人の力を感じます。馬路村に共感し、寄り添って仕事をされているように感じられます。

「農山村は消滅しない」という本があります(小田切道美/著 岩波新書 2014年)。30代の女性の人口で消滅するかどうかを計る増田レポートが全てではないと。
「どっこい生きている」という底力は数値化できません。危機に面して、立ち上がる人がいる。そこに集う人がいる。そんな農山村がいくつもあります。危機のときこそ発動する力があるかのようです。


もう一度、本澤さんに会いたくなってしまっているので、また訪れたいと思います。

追伸

かつおは必須。
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編集部の阿南です。11月も早くも中旬。そろそろ年の瀬が気になる頃となりました。

さとびづくりのための日頃の行いとして、今すぐ掲載するとは限らなくても、あちこち出かけて見聞する【SATOBITABI】。
この秋、かねてから(わたしが勝手に)関心を寄せている近自然河川づくりの研究者の方を訪ねて、高知へ行ってきました。

近自然河川とは、1990年代に故•福留修文氏によって提唱された工法で、わたしなりに一言でいうなら生態系と自然景観を維持保全する河川づくりの技術です。福留氏の愛弟子と言われる高橋崇氏(近自然河川研究所•香南市)に、貴重なお時間をいただきまして、あれこれ話しているうちに、あっという間に3時間近く盛り上がってしまいました。

場所は南国市内にある、佇まいの美しいカフェで。
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自己紹介のために持参したさとびごころを、有り難いことにご購入くださいました。(押し売りしてませんよ!高橋先生、ありがとうございました)

その後、近自然工法が施されたとされる鏡川上流を訪ねました。快晴に恵まれたこともあり、ひときわ美しかったです。高知には、仁淀川、四万十川など、何度でも訪ねたくなる川がありますが、今回は我慢、我慢。

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景観が自然すぎて、どこが工事によるものなのか、
護岸くらいしか、自分の目では判別できませんでした。


いつしか、コンクリートで固めるのが当然になってしまった川。治水のためには安全と信じて疑われることのなかったコンクリートですが、そろそろそれだけでなく、近自然なとりくみが認められてもいい頃ではないでしょうか。

いつかは、川のことをとりあげたいと考えています。
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編集部のあなんです。
11月になり、朝晩が冷えるようになりましたね。
先月末、35号の特集で紹介している「美しい多地区の田園風景を楽しむ会」さん主催の稲刈り体験に参加してきましたので報告します。
近鉄笠縫駅から南西方面に徒歩15分くらい、多神社のあるところが多地区です。わかりやすい営農組合の建物が建っています。ここが集合場所。楽しむ会の拠点でもあります。
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農村の将来を考えて、都会で暮らす人に農に親しんで欲しいとの思いで開かれている体験イベントだけあって、会場には会の取り組みを示す展示もありました。

あなんの稲刈り体験としては、10月初旬の杉浦農園の稲刈りボランティアにも参加してきましたので今年2回目。杉浦農園は、実際の収穫を手伝うものでしたが(どれだけ役立てたかは?ですが 汗)、こちらは体験を主にしてます。

 この地区では、ほとんどの稲刈りはすでに終えているのですが、イベントのために稲を残してくれているのでした。参加者は都会から情報を得て集まった家族連れや関係者をあわせて100名ほどのにぎわいでした。オリジナルのピザ釜があり、薪やオガライトが燃えていました。(暖かいので、ついつい近づくわたし)

ここで、稲刈りを全くしたことのない人のために、説明がありました。

稲は田植えのときは、小さな苗ですが収穫の頃には大人が一掴みできるほどの束になります。これがごはん一膳分なのだそうです。「農家が丹精こめて育てているので、それを知って食べてもらえたら嬉しいです」と、代表の大倉さん。
一束を掴んで、カマを手前に引くようにして刈ります。ゴシゴシしなくても大丈夫。手間に引くのがコツだそうです。10束程度をまとめて縛り、はざかけしていきます。

さあ、いよいよ一人ずつカマを貸してもらい、田圃へ。農家のおじさんやおじいちゃんたちは先生です。婦人会のみなさんは、後ほどみんなが頂くおもてなし料理の準備中。素人ばかりの参加者たちの稲刈りは、きっとプロの方からみると不揃いだったり刈り残しがあったり、問題だらけだったかもしれませんが、そこは「体験」が主目的なので何でも教えてくれました。

わたしが「へー」と思ったのは、束の縛り方。縛ったのは初めてです。なわで巻いて結ぶのかな?と、思いませんか?やってみると、ちぎれたりなわの長さが足りなかったり、うまくいかないんですよ。
おじいちゃんが教えてくれました。その手際の良さに感動。くるっと巻いて、両側をひねりあわせ、さらにねじって巻いた輪にねじ込むのです。それをかざかけする。
「これで、落ちてけーへん」。
なるほど!しっかりしています。
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見よう見まねの稲刈り体験。なんとか進みました。
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予定時間がくると、そこで修了して、こんどは再び会場に戻って、おもてなしです。
このおもてなしの準備を考えると、ありがたさがじわじわきます。(自分でもイベントをしたことがあるわけですが、あんなことも、こんなことも必要だっただろうなあと想像してしまう)
新米のおにぎり、当地でとれた小麦で作った団子の入った団子汁。自分でつくって焼いてもらうピザ。おなかいっぱいになります。参加者の多くは、子どもさん連れのファミリーなので、大人も子どももわくわくしていました。
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各テーブルにサーバーが置いてありますよね。
この中には、あったかい麦茶が入っていたのですが、その香ばしい美味しさにプチ感動!
「どこで買えますか?」と、思わず聞きました。
多地区の特産品は、道の駅で買えるものも多いので、おそらく道の駅ではないかと予想したのです。
しかし返事は「売ってないんです。イベントのために、頑張って煎ったんですよ」。
なんと。ご苦労様です。ありがたいです。いっそう美味しく感じました。ペットボトルの麦茶しか飲んだことのない人に、一口飲ませてあげたい味でした。

とある少年の戦利品。
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かえるくんですよー。

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大事に育ててくれるかな?

わたしも最後に、おいしいものをいただきました。
新米おにぎり。ごはんつやつや。
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団子汁。鶏肉のつみれいり。出汁に工夫がなされていたそうです。これがまた、美味しくて、帰り道に同じような材料を買って、その日の晩ご飯で真似してみました。(味は真似できませんでした )
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一日、あたたかいおもてなしをしていただき、大変楽しいひとときを過ごすことができました。

今、おしゃれなマルシェが流行しているように感じます。それは、かわいいものが好きなあなんも、嬉しいことです。

でも、この日は、ガーランドも、黒板に書いたチョーク文字も、カフェも、ライブも、何もなくて、ただ地元の方のあたたかいおもてなしと、野菜や特産品が並べてあるのと、生きものに出会える田圃があるだけの、だからこそ心のあたたまる思いのするイベントでした。

なわの括り方を教えてくれたのは、昔の農法(牛で耕したり、草や糞を肥料にしたりする)を知るおじいちゃんでした。今はコンバインがしてくれます。こんな知恵もイベントを通して伝えられて行くのが、嬉しいと感じました。

多地区は、車の運転ができないあなんでも電車で行ける、近くにある田舎。

現代という時代にあわせて、変化するところは変化するとして、太安万侶の時代から続くこの地の田園風景が受け継がれていってほしいと思いました。そして、次は、多神社にお参りにいかなくちゃ(まだ行ってないの?ってつっこまれそうですが)と、思いながら帰ってきました。





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