森や農のことは、毎号どこかで触れているさとびごころですが、川のことも気にしています。自然に近い川づくりのことや、アユが戻ってくる魚道のことなどを掲載してきましたが、編集部が川について特別に詳しいわけではなく、川の記事を作ることで読者のみなさんと共に知識を得たり、それを分かち合ったりしたい、ということなのです。
みなさんは、川と普段の暮らしが繋がっていますか。
渓流で釣りをする人には大問題ですね!
けれど、普通はあまり気にしていない人が多いのではないでしょうか。
子供が遊ぶなんて危険でとんでもない。
そういうイメージって、ありませんか。
ところで、です。
子どもたちがランドセルを放ったらかして膝までつかって遊ぶ川。
草花が季節を教えてくれる川。
樹木が木陰を作ってくれる川。
野菜の泥を洗い流せる川。
プラスチックゴミなんて、全く落ちていない川。
そんな川が(治水対策などの専門的な配慮がなされているのはもちろんとして)
暮らしとともにあったらいいなと思いませんか。
(ここでは、おもに市街地の川を指しています。山村では、もともと人と川が近いです)
わたしの勝手でしょうか。そんなこと、望む必要はないですか。
まあ、一個人の夢物語と思っていただいてもいいのですが、わたしにはそのような映像が度々浮かんできてしまいます。昭和のある時代まで、日本のどこでもあったはずの景色です。
今や、令和ですよね。
もう少し、勝手な夢物語を書いていいですか。
日々の暮らしの中で自然の景観があるかないか、ということは、人の精神的な健康にとって(精神の健康は肉体の健康に大きな影響がありますから肉体的な健康にとっても同様に)重要なんじゃないかと思っているのです。未来型の社会を想像してください、と言われたら、草木がひとつもなくてツルんとした構造物が集まったような景観が浮かんできますか?そしてオール除菌社会?それは気が狂いそうです。
ある特定のエリアに「便利さ」「効率性」に特化した場所がそうあるのはいい(合理的)と思います。
その一方で、自然と調和した部分がたっぷりと用意されていることでバランスが保たれる。
都会で仕事していても、緑豊かな住宅地に帰りたくなるのも、そういうことじゃないでしょうか。
暮らしの中に自然があること。と、考えたときに、市街地から森へ毎日出かけられませんが、川は日常の中にあります。この川と人が仲良くなることは、市街地での暮らしをすごく豊かにしてくれるはずです。
ですが、市街地ほど低い(水があふれやすい)場所にあり、川の近くまで開発されていて氾濫原が少なく、川を工事しなくては暮らしていくことができません。
どんな川なら仲良くなれるか、なりたいか。それは(工事が施されたとしても)自然に近い川。
自然に近い状態は、川の「景観」が教えてくれるものなんじゃないかと思うのです。
子どもでもわかるような「仲良くしたい」川。
でも、洪水のときは危険で恐ろしいものだと知っている川。
(誰でも理解できなければ、「勉強してから発言してください」などと言われた瞬間に、無言にならざるをえません)
では、川の「景観」は誰が作っているのでしょう。もちろん自然ですけど、その自然に加工を加えるのは人間で、河川土木専門の設計士さんがいらっしゃるわけです。これに、予算に関わる国や行政があり、施工する土木業者さんがあって実現します。
設計士さんがどんな川をプランされるか?です。
先日のSATOBITABIでお会いした有川先生は、子どもの頃に自然と戯れた原体験をもとに、近自然川づくりを日本で提唱された故福留修文氏のもとで修行された川のコンサルタントです。
近自然川づくりは、国土交通省のほうでは「多自然川づくり」という名称になっており、すでに平成18(2006)年に、こんなふうに指針が発表されています。
画像は多自然型川づくり基本指針より抜粋してお借りしています
「モデル事業であるかのような『多自然型川づくり』から『多自然川づくり』へ」(基本指針のポイントより)「川づくりにあたっては、単に自然のものや自然に近いものを多く寄せ集めるのではなく、可能な限り自然の特性やメカニズムを活用すること」(多自然型川づくり基本指針・実施のポイントより)
この時からすでに15年。みなさんの近くを流れる川は、いい感じになってきていますでしょうか。
おすすめの川スポットがあったら、ぜひ教えてください。
編集部では、ご縁をいただくことができた有川先生に、これからも自然に近い(国土交通省の言葉でいうと多自然)川づくりについて、教えていただけたらと思っています。
そして、「そうか、川があったなあ」「川と仲良くやっていきたいなあ」と思う人が増え、たとえ遠くのリゾート地に行かなくても、暮らしている町の中に、かけがえなく思う美しい川のある場所が増えていく未来を夢見ています。川で遊び、癒された経験を持つ子どもたちは、きっと大人になっても川を大切にしてくれると思います。有川先生がそうであるように。
そういう未来への最初の一歩って、川にゴミを捨てないことや、危険な成分を含む排水をしないことや、川の管理をしていらっしゃるう方のことを思うことや、川に排水の全責任を押し付けることなく、田んぼや町でも雨を受け止めていく取り組みなどにも繋がってくると思うのです。
妄想と、今日の一歩。両方を大事にしたいと思います。