自称「何でも炭にするおっさん」の炭プラントを見てきました。
(わたしが呼んでるんじゃないんですよ、ご自身でそうおっしゃったんですよ)

詳しくお伝えするには、所長の島田勇巳(はやみ)さんの許可などが必要ですが、ここでは簡単に、見てきたこと、感じたことなどをメモしておこうと思います(実は専門的な用語を使って正確に書けないだけです!)。ブログに書く程度はよいとのことでした。

前書き

炭の可能性については、熊本県の竹組を見学したことがあり、印象深いものがありました。
竹害という言葉があるように邪魔者扱いされがちな竹の、まとまった需要を掴み、生産体制を整えて事業化にされているところ。

もっと以前にも、竹害の解決と竹商品の販売を組み合わせて取り組んでおられる方(近畿圏で数人)に出会ったことがありまして(その中の人から竹酢を購入させてもらってます)、竹の可能性については当時から注目していました。けれど、なかなか難しい点もあり「みんなが竹炭を買うような時代になるのかなあ」「竹害が解決するほどになるのかなあ」という思いがよぎり、まだ少しピンとこなかったんですね。

ただ、私事ですがこの時、竹炭をたっぷりわけていただき、ベットの下に敷き詰めましたところ、湿気が解決して大喜びしたことを記しておきます。(北向きの部屋の湿気に困り果てていました)

家庭用のニーズだけでなく、産業用の需要があるんだとわかったのが竹組。

そして、今回プラント見学をしてみて、「ああ、こんなふうに炭が循環したら素晴らしいなあ」と思った次第です。そのところだけ、書けたら今日は満足です。が、書けるのかな?やってみます。

炭になるのは、竹だけじゃない

燃やせば灰、その手前で燻すと炭。日本人の伝統的な暮らしの中で必須アイテムでしたが、今は遠ざかっています。それが、新しい視点でもって、復活しようとしています。
山の中の隙間のような平坦地に研究所があります。プールのような約20㎥の窪みがあり、籾殻が投入されているところでした。
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深さは2メートルくらい。籾殻の下に、竹があります。籾殻は新潟県から、竹は近隣の竹林整備をしているところから引き取ったものです。その日はこれを交互に敷き詰めて、最下部の床面から熱を加え燻します。

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最上部の籾殻が炭化するまで3日、温度を下げて1週間、約10日でプールいっぱいの炭ができます。
これを籾殻と竹炭に分別し、さらに竹炭も形やサイズで分別し、あるものはそのまま、あるものは粉炭になっていきます。

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トリビアだったのは、炭になるのは籾殻や竹だけでなく、果樹園や公園から出てくる剪定枝、薪屋さんから出てくる薪にならなかった枝、災害で落ちてしまい出荷できなかった果物、水害で山から流れてきた木、酒粕、ビール粕、果てはプラスチックまで。「これ、炭にならないかなあ」という相談があると何でも炭にしてしまうらしい。どれも、そのままでは処分にお金がかかったり、捨ててしまうのが惜しく、何とかならないかと思われるような、「課題」となるものたち。

プラスチックは海洋プラスチック汚染の問題から、集まったプラスチックゴミを炭化できないか?という発想から生まれたとか。
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畜産の盛んなところからは、糞もやってくるそうです。(たしか、そう聞いた)
「何でも炭にするおっさん」なのです。炉のしくみは特許取得済み。

炭の用途は創造的

なんでも炭になるのはいいとしても、それをいったいどう使うの?と思いませんか。これが無限大です。
まず土壌改良。炭には微細な穴が空いていますから、そこに微生物が住みつき、土をよくしてくれます。栄養を与えるというより、その土の実力をアップさせる助けになる。だったらもっともっと、農地に炭を!と思いませんか。新潟県からやってきた籾殻は再び地元の田んぼに帰るそうです。
 
消臭効果も、想像以上のものがあるのかもしれません。島田さんに「災害地の土砂がどんだけ臭うか知ってる?」と、言われました。知ってるだけなら知ってました。球磨川を訪ねたとき、「ダムができる前の水害は土砂が臭くなかったけど、ダムができてからは嫌な臭いがして片付けがつらい」と聞いていたから。
そうした臭いを消すために災害地でニーズがあるそうです。

建築の現場では基礎に敷きます。奈良でも床下に炭を敷いてくれる工務店があります。わたしはベッドでしたが、それが家なら最強です。炭素埋没法と呼ばれるもので、これまでも個人的に興味を持ってきました。『発酵道』で有名な酒蔵 寺田本家でも、床下に炭を敷いていましたよね。炭はその地を還元電圧化します。イヤシロチ化します。(大地の再生でも炭を埋めてたなあ)
炭素埋没法の説明をしているサイト(今検索したもの)

鉄工所でも、鉄を冷やすためや、コークスを燃やす促進?のために炭が使われるそうです。初耳だったため、消化不良な書き方ですが。。

家庭での使い方として、冷蔵庫の野菜室に入れておくと、野菜が発散するエチレンガス(鮮度が落ちる原因)を吸うので長持ちするそうですよ。

また、腸内環境を良くるのにも一役。耳かき1杯分の炭を食べる。そんな少しでいいの?と聞き返しましたが、それでいいとのこと。炭って小さな力持ちなんですね。(そういえば、麻の粉炭を持っていました、わたし。今日から食べます。耳掻き1杯なら簡単です)


輸入ばかりの炭を国産化しよう

このように、炭にする素材は多種多様でも出来た炭の長所は共通するようで、活用法は多く、今後もいくらでも見つけていけるんだそうです。今でも炭は求められ、流通している。ただし、ほぼ全てが中国産とのこと。
島田さん「キャンプ場やホームセンターで炭を売ってるでしょ。全部中国産よ。安いから。炭の需要があっても、手間暇かけた高級な炭だったら使えないじゃない。だから、安価に提供できるような体制を作るために、やってるんだ。この炉では、石油などのエネルギーは使わないし、炭化は勝手に進むから人は火の番をするだけ、一度に大量に5トン作れる。これだったら1キロ数百円になる。」

また、炭化の過程で生まれる熱も利用するため、発電のシステムも開発されていました。発電のために何かを燃やすのはもったいないことです。そうではなく、必然的に発熱する場で捨てられてしまう熱を、活用して発電するのは価値があると思います。「炭の蓄電」も可能なので、それが実用化されるとさらに炭スミな社会になっていくかも。

食料でも言えることですが、国産可能なものを、輸入に依存してしまうのはもったいないと思います。危険でさえあると感じます。原因はいつも「(輸入のほうが)安いから」ですよね。いつまでも安いのでしょうか。今の時代、たまたまそうなっているだけかもしれません。食やエネルギーなど、命に直結するものは国産で自給できた上で必要に応じて輸入、というのがいいと思えてなりません。炭も、このような取り組みの延長線上に、国産化を取り戻せたらなあと思いました。


竹は無限循環可能

多様な素材の中でも、研究所の近くには竹が多く、竹の話が出ましたので記しておきます。
竹が困りものになるのは、成長の早さにあります。それが幸いして、4年で炭化できる状態に成長するそうで、計画的に4年でループしていくと無限に竹が取れることに。木材は、皆伐すると森に戻るのに50年、100年とかかりますが、竹は4年。成長の早いものは、それだけエネルギーを蓄えているので、いい炭になるとか。木炭の4倍の吸着効果があるそうです。
また、木材の伐採は特殊な技術であり、危険を伴いますが、竹は木材ほどではなく、ボランティア活動でもよく行われています。運ぶのも、木材よりずっとずっと軽い。現地で小切りするもの容易です。
竹林はどこの地域にもありますし、今年はこの場所、来年はこの場所、4年後は元の場所と炭化して活用していくと山もきれいになり、炭の効果が 土地や人間にも役立ち、いいことたくさんではないでしょうか。木材は森林の持続可能性を考えて。竹は4年で無限に回す!それぞれに、活躍してほしい。


運送の課題を解決

何でも炭になる。炭は何でも使える。だけど、例えば全国のあちこちからこの研究所へ炭の素材を運び、再び帰していくのは運送のコストやエネルギーがもったいないと思いますよね。
そのために、トラックに積むことができる移動式のプラントもできてました。炭を必要とする場所で、このプラントを設置できます。

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画面中央左寄りのシルバーの箱のようなものと、その足元にあるバルブのようなもの(ファンです)、その奥にあるメッシュでできたカゴのようなもの、そして画面右側にあるタンクのようなものを見てください。

カゴの中に、籾殻や枝や竹などの材料を入れます(材用によってカゴの目の大きさが変わります)。
そのカゴに、シルバーの箱を被せます(今から被せようとしているところ)。 ファンから熱を送り炭化。ファンを回すためには少々電気を使うそうですが、熱で発電して自給できればベストですね。炭化中の排熱は管を通ってタンク型の物の中へ。ここで2次燃焼をしますので、排出される煙はわずか。
 
箱ひとつを炭化するのに、6時間。「就業時間内に終わるよ(島田さん)」炭化中は手間いらず。出来上がる炭は1トン。大量に炭化したい場合は、連結も可能。

とのことでした。災害地や果樹園に、トラックで納入できることになります。島田さんは、炭の製造や販売が目的ではなく、このようなプラントを普及させていきたいとのことでした。すでに、日本に100機はあるそうです。

炉の周辺には、これから炭になる木、竹、貝殻などが積んでありました。出来上がった炭も、一時的に保管します。広い敷地のある場所が必要ですね。プラントを生かして事業化するには、採算などまた別の課題も解決しなければなりません。成功事例が生まれれば、それに学ぶ人たちも増えていくかもしれません。
それには、炭の魅力や可能性がもっと多くの人に知られる必要があると思います。わたし自身も、もっときちんとお伝えできるようになれたらと思いました。いや、わたしが無理でも、そのような場を、さとびごころの中に作れたらと思います。

何故炭?

今少しつず炭の可能性が理解されはじめていると感じます。局所的に認められている状態から、広範に認知される状態へ、ぐらっと来てるか、来てないか、みたいな。
わたしは何故、炭に惹かれるのでしょう。炭になるものは植物由来、動物由来のもので、もともとは土から生まれてきたものたちです。それを人間が使って、不要になったり邪魔になったりします。捨てるのにもお金がかかる。捨てたら燃やす?埋める?それよりも炭になったらどうかしらと。
 
炭をどう使ったとしても、最後は土に還せる。土壌を「改良」するくらいですから、害にはならないはずです。どこに還しても、何かしらの仕事をしてくれるはずです。土から土へのサーキュレーションは、道の途中で途切れてしまうと成立しませんが、「炭」という結び目を作ることで輪になるんじゃなかいかなあという思いがあるんですよね。。。
 
そして、これからITC化が進み、わたしたちの暮らしはもっともっとデジタル化していくでしょう。そのときの電磁波は人間にどういう影響があるのか、ないのか、あまり情報が出回りませんが、1995年に出版された『ナチュラルハウスブック』(デヴィッド・ピアソン著 /産調出版)の中ですでに問題視されていました。コンピューターもスマホもなかった時代です。けれど、ICT化はもう避けられないだろうと思います。であれば、地域や自宅で何か浄化できないか。そのとき、炭もひとつのヒントになると思うんです。土地、床、壁に、炭が取り入れられることで、森の中にいるときのような安らかな場所に近づいていけないかしらと。これはわたしの妄想ですけど、炭が気になる動機になっているのはたしかです。